fofofofa

fofofofa meets yarmo fofofofa meets yarmo

JOURNAL.02TALK
Yarmo×fofofofa special boilersuit

2023.11.08

Yarmoについてもっと知りたい!
(後編 ボイラースーツの魅力)

fofofofa meets yarmo

菊池:今回別注させてもらったボイラースーツは、ヤーモの代名詞的存在だと思うんですが、そもそもどんな歴史があるアイテムなんですか?

内田:もともと温水や蒸気を伴うボイラー作業をする重工業労働者向けのワークウエアです。

菊池:映画『千と千尋の神隠し』に登場する釜爺だ! 油屋の最下層にあるボイラー室に住んでいますよね。

内田:そうですね(笑)。クライアントのニーズに合わせて、セイルクロス(帆布)を使用した耐久性と断熱性、対摩耗性に優れたものでした。現在は整備士やエンジニアなどからも人気で、熱や汚れから守るだけでなく、実用的なポケットや動きやすさが好まれています。

菊池:たしかに、ボイラースーツを着ているときはポケットに全部荷物を入れて手ぶらで出かけられます。

内田:しかも上下別々の服よりも、頭、手、足を除いて全身を覆うオールインワンになっていることで、より一層熱や汚れなどから体の保護をする機能が高いんです。さらにYarmoのボイラースーツは動きやすいように基本的にはオーバーサイズで作られています。

菊池:程よく体が泳ぐオーバーサイズで、着ていて本当にストレスがないですよね。着ただけで働き者になれそう。同時に、ゆったり寛げる着心地だから、すぐひと休みしちゃいそうでもあるけど(笑)デザインも、昔から変わらないんですか?

内田:基本的なデザインは今でもほぼ変わっていません。グラストンベリーで扱うようになったときに、サイズ感だけ少し変えたような記憶があります。

オリジナルのboiler suit

菊池:つなぎ・オールインワンというような括りで、タウンユースに適するようなデザインのつなぎが今はたくさんあるけれど、ワークウエアらしい機能性をそのまま踏襲したものを着たいという人も多いと思います。

内田:船員や港湾労働者への主要な供給業者として長年一貫して耐久性にこだわって、その結果として丈夫な縫製の専門知識が生まれたり、workerのニーズに合わせたデザインが採用されています。Yarmo工場にとっては、これまでも今も、ファッションはフォーカスポイントではなく、スタイリングは全てお客様に委ねています。

菊池:本物を誠実に作る、ただそれだけ。格好いいです。

内田:自分たちのワークウエアを必要としてくれる人に対して、何度洗っても、どんな過酷な場所で着ても、丈夫に使いこなせるアイテムを提供したい。 そういうプライドを持って、Yarmoの職人たちは働いています。だけど実は最初、Yarmoの縫製を見たときに、雑というか粗野に見えたんですね。

菊池:fofofofaを一緒に手がけている滝口さんもそう言っていました。でも、そこが魅力とも。

内田:アメリカのジーンズなどもそうかもしれませんが、生地を重ねてダブルステッチでダダダッと縫い上げている。直線縫いからカーブ、そして脇の重なっているところまでやるんです。別の縫製工場で同じことを頼もうとすると、けっこう大変だよって言われることを、彼らはいとも簡単にやってしまう。直素晴らしい技術だと思いますね。

菊池:工場では、どんな方々が働いているんですか?

内田:工場のスタッフは通常工場で一生働きます。アメリカだと転職することでキャリアアップを図ったりもしますが、イギリス、特に職人になると、ひとつの場所で務めきるという人が多い印象があります。

菊池:ずっと同じ仲間と働き続けるんですね。

内田:そうですね。現在の工場マネージャーは20代で入社後、30年以上務めています。60代で一旦リタイヤするスタッフも、その後も近所に住んでいるので、人で不足のときに招集されるんです(笑)。

クオリティチェック中のキャロル
縫製担当のジャッキー、30年以上のベテラン選手

内田:工場内は各スタッフみんながプロフェッショナリズムを持って働いています。でも、家族のようにアットホーム。みんな自作のエプロンやスモックを着ています。

菊池:スタッフの方々の笑顔がとってもキュート。fofofofaのボイラースーツを縫ってくださっているところですね!

内田:かわいいですよね。家庭感溢れる工場はヤール川に面していて、大きく作られた窓からは日光が入る、天井高のある典型的な古い英国建築です。

菊池:自然光がたっぷり入るって、とてもいいですね。健やかな感じがする。

内田:機械室では常にラジオが流れています。休憩時間には、それぞれ自分のおやつを持ってティールームで過ごします。例えばリッチティービスケット。

菊池:イギリスといえば!なおやつですね。素朴で美味しい。スタッフは何名くらいいらっしゃるんですか?

内田:25人くらいでしょうか。ほとんど女性で、パタンナー、カッターには男性もいて、男性スタッフがお茶を淹れてくれたりするんです。

菊池:へえ、そうなんですか!

内田:かれこれ30年以上前からイギリスには行っていますが、最初に衝撃を受けたのが、それでした(笑)。お茶汲みも洗い物も、庭いじりも男性だったりするので。男性が家事をすることが、全然普通のことなんですよね。

菊池:家事は女性がするもの、という概念がそもそもないんですか?

内田:ないと思います。男女の区別がなく、得意な人が得意な事をやるだけ。ただ男性にはレディファーストというかジェントルマンと言われることに誇りを持つ雰囲気があるので、ドアの前にいたら必ず開けてくれるし。

菊池:杖をついているおじいちゃんの後ろを歩いていたら、ドアを開けて待っていてくれたという経験、わたしもあります。相手のために、自分ができることは当たり前にやる。真のジェントルって感じですよね。

YARMOUTH STORESスタッフのみなさま

菊池:グレートヤーモスを旅しているような気分になりました。家族のようなアットホームな工場の魅力を知ることができて嬉しいです。内田さん、貴重なお話をありがとうございました!

おしゃべりを終えて。

Yarmoのボイラースーツを長年愛用してきたけれど、こうして改めてお話を聞くと、長い歴史や作り手のプライドもまるごと纏っているような気持ちになる。海の向こうの小さな工場で縫われたボイラースーツが、はるばる海を渡ってやってくる。袖を通すたびに、いろんな景色が浮かぶ。いつか、この花柄のボイラースーツを着て工場にお邪魔しよう。手土産に、とびきり美味しいビスケット持参して。

interview : Akiko Kikuchi
photo & text : Shoko Matsumoto
model photo : Shinsaku Kato
photo : GLASTONBURY SHOWROOM