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PETAL mohair mix knitができるまで。

JOURNAL.06TALK
PETAL mohair mix knit

2023.11.30

PETAL mohair mix knitができるまで

PETAL mohair mix knitができるまで。
PETAL mohair mix knitができるまで。

PETALとは、はなびらのこと。
ベールのように軽やかな素材で、
ふわり静かに花開くような、
生命力を宿したニットが欲しい。

それは一体どんな花?
柔らかくて、繊細で、
だけどどこか大胆で。

GALLERY

そんな朧げなイメージから始まったfofofofaニットの旅。今回の舞台は山形。実は山形って、ニットの有名な産地なのです。夢に見た“花咲くニット”を形にするべく門を叩いたのは、山形県寒河江市にある「佐藤繊維」さん。

佐藤繊維
佐藤繊維

佐藤繊維とは

1932年創業の紡績・ニットメーカー。糸づくりから製品の仕上げに至る全ての工程において「日本のものづくり」を大切にし、独自の目線と自由な発想でオリジナリティ豊かな製品を世界に向けて発信。現社長の祖父にあたる2代目の社長が山形の酒蔵を移築、リノベーションし今の「佐藤繊維」の工場の他、セレクトショップ「G E A」、またレストランを営み、地元の人々に親しまれている。

今回のニットの旅案内人

大澤翔太郎さん

大澤翔太郎さん

佐藤繊維ニット部

ニットが好き。自称ホールガーメントオタク。学生時代に研修旅行で訪れた山形の風景と空気が好きになり、運よくニットのプログラミングの求人を見つけこの業界に入る。埼玉から山形に引っ越して14年。行きつけのお店:好吃再来(ホツザイライ)好きなアイドル:アンジュルム

滝口和代

滝口和代

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山形出身。いつか故郷山形で“ものづくり”がしたいという夢を持ち続け、今回ようやく形に(涙)。佐藤繊維さんが営むセレクトショップ&レストランは、帰省のたびに立ち寄る行きつけ。ナチュラルと大胆が同居したものに惹かれる。

菊池亜希子

菊池亜希子

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今回、山形初上陸。ニットは肌触り命。チクチク恐怖症。肌がストレスを感じるものは、どれだけ可愛くても着られない。フリルや花など、乙女心をくすぐるアイテムが大好きだけど、とことんメンズライクな服も好き。境界線の間でふわふわしていたい。

fofofofa:今回は私たちの長旅のような(!)ニット企画にお付き合いいただきまして本当にありがとうございました!素敵なニットの誕生をお手伝いしてくださって、感謝の気持ちでいっぱいです。まずは改めて、佐藤繊維さんの歴史を教えてください。

大澤さん:もともと糸の紡績から始まった会社です。当時って燃えにくくて、汗冷えしない特長持つ羊毛を国内で生産しなければ、ということで軍からの需要があったみたいなんです。同じころに、東北を襲った冷害で不作も続いたりして、食いぶちに困った農家に仕事が必要になり、国を絡めて産業としてやっていこうという背景があったんです。放牧できるほどの土地はなかったんですけど、一軒一軒おうちで一頭羊を飼うようになり、その子たちの毛を刈り集めて糸にしていくみたいな家庭内産業からスタートした。そこから徐々に、みんな洋服も欲しくなってきて、最初は糸を紡ぐところもおうちでやっていたんだけど、だんだん追いつかなくなって。それで、糸はまとめて機械化して作ろうとか、ニットも工場で作ろうという風に、紡績から編みもやるようになっていった。歴史に合わせて少しずつ変化してきた感じです。

fofofofa:子供の頃、私のまわりにも紡績の仕事をしている人がいっぱいいました。友達の家や親戚の家にも、この仕事をするお母さんがいっぱいいたなあ(滝口)。さてさて。今回、ひらひらゆらゆらと花びらのように広がるボリューム襟のニットですが、我々のあらゆるこだわりを丁寧に具現化してくださった大澤さん。振り返ってみていかがでしたか?

大澤さん:やはり襟の部分のイメージを形にするのは大変でしたね。襟のボリューム、落ち方、広がり方に並々ならぬこだわりをお持ちだったので(笑)、かなり試作を重ねました。

fofofofa:時間をかけてくださり本当にありがとうございました。この襟の部分の透かし編みみたいなものを機械編みで表現できるんだ!と驚きました。

大澤さん:襟の部分は、別で編んで縫製を入れてしまえばそこまで大変ではなかったと思うんですが、今回は縫い目を入れないで表現しようと思い、結構頭を悩ませました。でもそのほうがより柔らかさも出て可愛くなるという確信があったので、ギリギリまで頑張ってみようと思って。

fofofofa:襟の部分が仕上がるまで、何往復もやり取りしましたよね。細かいこだわりにとことん付き合ってくださって、本当にありがとうございました。おかげで襟の部分はとても美しくイメージ通りに仕上がりました。360度、全方位的にゆらゆらとキレイで、山形から届いたニットを試着するたび、「可愛い〜!」と叫んでいました。「可愛い〜!でも…ここがこうなると、もっと可愛くなるよね」というわがままな微調整を何度も繰り返していただきまして、本当に感謝です。

大澤さん:頑張ってよかったです。可愛いは正義ですから!(笑)どうしたらボリューミーな可愛さを表現できるかを最大限に引き出す設計になっています。

fofofofa:ボリュームたっぷりで嬉しくなります。他に頭を悩ませたことってありますか?

大澤さん:今回使用したシルクモヘアの糸は毛足が長い分、編みたての時は糸同士が絡まってしまって調整の時に苦労したのを覚えています。

fofofofa:チクチクが心の底から苦手な私たちのために、糸の配合も丁寧に考えてくださってありがとうございました。肌触りはデザイン以上に譲れない部分なので…。

大澤さん:今回は、2種類の糸を使って編み立てています。一つ目の糸はシルクを芯にしてモヘヤがループ状になるようにシルクと撚りを合わせてから起毛することで、繊細な毛足を引き出しています。ナイロンを芯にすることも多いモヘヤの糸ですが、天然繊維にこだわる製法で上質な糸に仕上げています。二つ目の糸は繊維の太さが19.5μmのエクストラファインメリノに分類されるような原料を用いたウールの梳毛糸。チクチクしにくい肌触りを一番に考えました。この糸はウールならではのふっくらとした表情が特徴です。この二つの糸を組み合わせることで、シルクモヘアならではの上品な毛足にウールのふっくらとした表情が加わった、温もりのある表情になりました。

fofofofa:素肌に直接着てもチクチクしない!個人的には襟をキュッと絞ってピエロのような雰囲気で着るのが好きなんですが、そうすると首や顎に当たる面積も増える。だけどそれでもストレスがないです〜。ところで、今回はどんな編み機を使っているんですか?

大澤さん:お二人の要望にあった「人の手のぬくもり」を出せるように、手編みのようなざっくりとした表情を出すことができる編み機を使用しています。

fofofofa:機械編みでも、手仕事のような表情を出すことができるんですね!

大澤さん:今回は、国内でも十数台しか残されていない編み機を駆使して無縫製で仕上げました。ローゲージ特有の縫い目のごろつきがないニットを編むことができるため、手で輪針を使って編んだような雰囲気を表現するのに適しているんです。

fofofofa:工場見学させていただいた際、何度お聞きしてもニットの世界は本当に奥深く難しかったのですが、このお仕事に携わる方々が皆「ニット愛」に溢れていたことが印象的でした。今回のPETAL KNITはホールガーメントで編まれていますが、大澤さんが惚れ込んだニットの世界、そしてホールガーメントの魅力を教えてください。

大澤さん:ニット愛、確かにそうですね(笑)。一つの機械で編みながら一着のセーター形作るホールガーメントは、「機械を通して手でセーターを編んでいる感覚」を与えてくれます。伝統的なセーター作りと、最新のプログラミングによって生み出されるセーター作りが、感覚的に重なることがとても面白いんです。

fofofofa:編むのは機械だけど、自分が出す指示に全てがかかっている…、実際に自分の手や頭の中で完璧にイメージできていないと、指示も出せないですよね。

大澤さん:そうですね。

fofofofa:それって、例えるなら完全な手仕事のものと、工業製品のあいだ、みたいな。

大澤さん:じゃないかなと、思っています。僕は手仕事に対してすごく敬意を抱いていますが、やっぱり手仕事は数に限りがあるから、欲しいと思ってくれる人に行き渡らない。今の仕事は、機械の力を借りるけど、そういう手仕事的な感覚を盛り込めるのが自分には合ってるなと思います。でも、心が強くないとできない仕事です。一日ずっと調整してたけど、まともに編めなかったとかザラにあるんで。時間も、お金もかかっているけど、何も生み出してないとか。

fofofofa:想像しただけで白目です。心臓に毛が生えてないと、ですね。ウールなだけに。

大澤さん:そうですね。自分と『編み』との間に結びつきのようなものを感じられないと、難しい仕事だと思います。

fofofofa:めちゃくちゃデジタルに見えて…

大澤さん:そう。デジタルだけど、そこから編み機に持っていった瞬間アナログになって。機械も結構トラブルがあるんですよ。そうしたら、メカ的に解決しないといけない。

fofofofa:理系なら理系だけとか、クリエイティブな分野だけとか、そういうことじゃないんですね。全部それなりにできないといけない。

大澤さん:そして経験値も。だから死ぬほどやるしかなくって。頭おかしくなるほどやるしかないんですけど(笑)。

fofofofa:毎回いろんパターンが起こるわけじゃないですもんね。

大澤さん:ルーティーンにはなりづらいので。糸作りもそうですが、この仕事って本当に“誰もやったことがない”みたいなことの連続で。誰も足跡をつけていないところ、真っ白な砂浜なのか雪原なのかわからないけど、そういうところを一歩一歩進んでいくような感覚です。

大澤さん:それをストレスに感じる人もいるでしょうし。

fofofofa:逆に大澤さんみたいに血がさわぐ人もいる。

大澤さん:多分僕の場合はフェチなんだと思う。

fofofofa:結局はラブってことですね(笑)。このはなびらニットプロジェクトを、愛を持って一緒に歩んでくださって本当にありがとうございました!

編み立てふわふわ、ほやほやニットだよ。

photo & interview : Akiko Kikuchi
text : Shoko Matsumoto