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KENNY SUITができるまで。

JOURNAL.15TALK
KENNY SUIT

2025.07.04

BUNON × fofofofa
KENNY SUITができるまで

シャーンシャーン……。
どこからか聞こえてくる機織りの音と人々の話し声。

インドに古くから息づく手仕事の素晴らしさを
日本に紹介してきた大好きなブランドBUNON(ブノン)。

そのBUNONが、インドのパートナーたちとともに継続してきた
“Slow Craft”という服づくりに、
この夏私たちfofofofaも
参加させていただきました。

手紡ぎ・手織りのやわらかなカディコットンに、
たっぷりあしらった涼しげなフリル。
こだわりを詰め込んだ「KENNY SUIT」が、
はるばる海を越えて私たちのもとへ。


今回の登場人物

吉田謙一郎さん(ケニーさん)

吉田謙一郎さん(ケニーさん)

BUNONのディレクター

好きなアーティストはCHAGE &ASKAと槇原敬之。
インドで食べるマトンカレーが大好物。
@bunon_jp

浅野愛美さん

浅野愛美さん

BUNONのデザイナー

毎日子供とけん玉の練習中。今年はじめてスイカバーデビュー。
40年損した気分。
@bunon_jp

菊池亜希子

菊池亜希子

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好きなアーティストはKaren Dalton。
冷やしうどんのトッピングを日々開発中。
@kikuchiakiko_official

滝口和代

滝口和代

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夏に聴きたいアーティストはJorge Ben Jor。
毎朝梅干しを食べて夏を駆け抜け中。
@takiguchi_kazuyo


インドの手仕事が生きる
手紡ぎ・手織りのカディコットン

菊池:今回のジャンプスーツはBUNONの服と同じく、デザイン以外のすべてをインドのコルカタで生産していただきました。BUNONの服づくりについて、改めてお話を聞かせてください。

浅野:BUNONは、インド人夫婦のスミトラとスリマ、日本のわたしたちが協力し合って始まったブランドです。もともと彼らは伝統衣装のサリーを作っていました。数年前に、ケニーさんが彼らの生地に出会い、手紡ぎ・手織りならではの美しさに一瞬で魅了されたんです。その出会いが、BUNONの服づくりのはじまりになりました。不思議なご縁でしたね。

スリマとスミトラ。

ケニー:インドでは、糸を紡ぐ、染める、生地を織る、縫製するといったように、それぞれの工程に高度な技術を持つ職人さんたちが、服づくりに関わってくれています。農業と兼業されている方も多いです。スミトラとは、メールやテレビ通話で頻繁にやりとりしていますが、それだけでは伝わらないこともあるので、年に一度は現地を訪れるようにしています。その際に実際の現場を訪れ多くのことを教えてもらったり、一緒の時間を過ごしたりするなかで、信頼関係が築かれていきました。

染めた糸をボビンに巻き取る
布の設計に基づいて行われる経糸整経。チェック柄の場合は経糸の色順や本数を正確に揃える必要があり、特に高度な技術が求められる。

滝口:糸って、日本の製品だと“S撚り”“Z撚り”と言ったりしますよね。インドには、そういう名前がなさそう。“人撚り”がいいですよね。ものづくりの基本というかんじがして。

菊池:“手作業でしか生み出せないゆらぎ”っていいなぁ。均一じゃないからこそ、人肌にしっくり馴染む。贅沢な事だなぁとも思います。

浅野:この番手の生地を手織りすること自体、ほんとうにすごいことですよね。作業工程の動画を共有してくれたのですが、昔から変わることのないつくり方を大切にしていて、職人さんには感謝しかありません。

菊池:光やその場所の空気もまるごと織り込んでいる。この土地でしか生み出せない、命が吹き込まれた布ですね。そもそもカディコットンというのは、どんなものを指すんですか?

ケニー:カディの定義は、“手紡ぎ・手織り”。コットンだけでなく、リネンやシルクのカディもあります。インドで独立運動が起きたときに、「自分たちが着るものは自分たちでつくろう」という動きがあって、そこから発展していったそうです。ガンジーが着ていた布でもありますね。それぞれの生地に特徴があり、経糸整経などの複雑な工程がある場合はその作業が得意な職人さんにお願いしています。職人さんによってどうしてもそれぞれ違いは出ますが、全て同じではないこと、それがまたいい風合いになります。

浅野:カディは肌に馴染むので、着ていて本当に気持ちいい。暑い国の生地なので、汗をかいても不快にならないんですよね。

菊池:本当に、いつまでも触っていたい優しい肌触り。こういった手仕事の技術は、インドではきちんと受け継がれているんですか?。

ケニー:受け継がれてはいるんですが、新しい仕事を求めて辞めていく人も多いです。未来に繋げていけるように、職人さんや働く方たちの環境などスミトラたちも多くのことに取り組んでいます。

滝口:手仕事の現場をどう継承していくかという課題は、インドも日本も同じなんですね。

浅野:スミトラたちと直接取り組むことで、なるべくシンプルな工程の無駄がない服づくりを続けていきたいです。


BUNONらしさの光る
マドラスチェック

菊池:ケニーさんが作ったマドラスチェックなので、「KENNY SUIT」と名付けました。BUNONの展示会でこの生地を初めて見たとき、色づかいがすごくタイプで、「全身で纏いたい!」って思ったんです。

ケニー:うれしいですね。僕がチェック好きなので、BUNONらしいチェックを作ろうと思って、マドラスチェックにしました。今季のテーマが「MUSK」だし、そこからふくらませてグリーンを取り入れて。

菊池:チェックづくり、楽しそう! でも私が作業し始めたら、一生終えられなさそう(苦笑)。線の間隔や配色など、組み合わせは無限大だよね。

滝口:エンドレスだね(笑)。

菊池:ケニーチェックの構図や配色は、なにかヒントがあったんですか?

ケニー:僕の場合、壁紙やタイルなどがデザインソースになることが多いですね。毎シーズン、スミトラにはテーマをまとめたボードを共有しています。ものづくりが本当に好きな人たちなので、こちらの提案に対して「できない」と言われたことがないんです。

浅野:もちろん、最初の頃は想定外なことがたくさんありました。実物が届いてみたら「あれ?思ってたのと違う」なんてことも(笑)。でも、やり取りを重ねていくうちに、コミュニケーションがどんどんスムーズになっていきました。

滝口:お互いにリスペクトと信頼があるからこそ、ですね。

ケニー:インドの素晴らしい技術が失われないように、服づくりを持続させていくことを第一に考えています。

浅野:だからこそ、無理をさせるようなことはしたくないですし、過剰にものをつくって売れ残りが出ないようにも気をつけています。

菊池:「欲しいと思ってくださる方に届くだけの量を作る」ということは、fofofofaでも大切にしている考えです。今回は、元々この生地で作っていたフリルブラウスのデザインをベースに、ジャンプスーツを作っていただきました。

浅野:私はカディコットンで甘めのアイテムを作るのが好きなので、フリルを印象的に見せようと、このボリュームにしました。断ち切りも混ぜて、ラフな雰囲気にしています。

滝口:たっぷりのフリルって、それだけでうれしい! ボタンや紐といった隅々にまで、手作業の美しさが宿っていますよね。

菊池:このBUNONボタン、すごく好き!

ケニー:プラスチックボタンは使わないので、グレーは貝ボタン、グリーンは真鍮ボタンを使っています。

菊池:限られた素材の中で表現するのが、BUNONらしさにつながっているんですね。BUNONの服は、ケニーさんから放たれる粗野でクラシカルな気配と、アミさんの甘すぎないチャーミングな香り、そしてインドの技術がどれも欠ける事なく共存している、そのバランスがとても心地いいです。

滝口:このジャンプスーツも、一枚でかわいさが担保されていて、かつユニセックスな印象のマドラスチェックを思いきり楽しめるのが魅力。スリーブのカットは、リアルなこだわりを詰め込みました。二の腕の見え方が気にならない絶妙なラインはまさに乙女の味方!

菊池:暑いからノースリーブを着たいけれど、抵抗のあるカットラインってあるよね。このジャンプスーツは、フリルのボリュームがあるのと、二の腕が程よく隠れるカットラインで、着やすいなと思います。

浅野:アームホールが大きめだから腕が華奢に見えるし、風通しもいいよね。インにTシャツを着ても可愛いです。カディコットンは生地がやわらかいので長く着ると毛玉ができたりするんですが、それもいい表情になるので、愛でてもらいたいです。

菊池: 毛玉のあるフリル、たまらなくかわいいね。夏空の下でたくさん着て、ざぶざぶ洗って、お日様の下で乾かして。フリルの佇まいも生地の風合いも、おおらかに育っていってくれるだろうね。

photo :Yoko Iwasa
text : Yuka Nakano