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ブルージーンズ・MARIACHIができるまで part.1

JOURNAL.16TALK
MARIACHI

2025.07.23

ブルージーンズ・MARIACHIができるまで part.1

「いつかデニムアイテムを作ってみたいね。
産地の岡山で」
私たちの夢物語から始まった、
fofofofaのデニムプロジェクト。
その第1弾となる、刺繍をあしらった
ブルージーンズは、
晴れ渡る空のような、ポジティブでおおらかな
存在感があります。

プロジェクトのキーパーソンは、岡山に暮らしながらアパレル会社と工場で働く職人をつなぐ立場で、ものづくりに携わっている大戸慎太郎さん。大戸さんが長年の経験から得た知識を私たちに惜しみなくシェアしてくださり、試作を重ねてようやく完成したブルージーンズ「MARIACHI」。その制作話をお届けします。

今回の登場人物

大戸慎太郎さん

大戸慎太郎さん

Spinner主宰

岡山県倉敷市児島で「Spinner」を主宰。アパレル会社と工場をつなぐ仕事をしている。いつも穏やかで、まるで瀬戸内海のような方。

菊池亜希子

菊池亜希子

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デニムは、実はそこまでたくさん持っておらず、気に入ったものを擦り切れるまで履くタイプ。HANAの新曲「Blue Jeans」を聴いて、青春を思い出す夏。
@kikuchiakiko_official

滝口和代

滝口和代

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デニム好き。今年の春はデニムのコートを買ったのに着ないまま夏を迎えてしまう。只今デニムのシューズを探し中。デニムと聞くとダニエル・シーザーの「Japanese Denim」が頭の中ぐるぐる♪
@takiguchi_kazuyo


愉快に楽しくあたたかく
キャンバスのようなブルージーンズ

菊池:このプロジェクトが始動したのは2022年なので、長い旅を経てついに完成です! fofofofa初のデニムアイテム「MARIACHI」。手刺繍が施されているので、”キャンバスのようなブルージーンズ”というイメージを大戸さんにお伝えするところから始まりました。

大戸:最初にアイデアをいただいたときは、ジーンズは既製品を流用できるものがあれば、コスト的に良いのかなと思ったんです。でも、おふたりから今回は手刺繍を加えたい、今後も多様な加工を加えていきたいという話を聞いて、「これは1からジーンズを作るべきだ」と思いました。

滝口:打ち合わせのたびに、大戸さんからデニムに関する膨大な知識をシェアしていただいて、とても贅沢な時間でした。勉強になりました!

大戸:いえいえ(笑)。

デニム生地の製織は岡山県井原市、裁断は岡山県倉敷市児島、縫製は香川県善通寺市で行われました。

菊池:fofofofaがデニム生地でなにかを作るなら、ベーシックなものをという構想は以前からあったんです。刺繍のデザインはいろんな性格のものがあるので、デニム自体は主張しすぎない。でも、将来古着として残っても、時代を問わずに愛されるものにしたいねって。

大戸:着古したような色合いを目指して試作していきましたね。あえて「デザインぽくない」と言ってよいかわかりませんが、ナチュラルなブルージーンズに仕上がりました。

滝口:大戸さん的に「ここはこだわったぞ」というポイントはありますか?

大戸:ジーンズは縫製の後で色加工をするので、縫い糸の色も加工後を想定して選ぶ必要があります。今回は、少しくすんだピンクのステッチにしました。

菊池:かわいい色ですね。ディテールまで、まるごと愛着が沸きます!

大戸:急いで作って、急いで販売されて、すぐにディスカウントされてしまう。そういうものには、寂しさを感じます。今回のジーンズはそれとはまったく違う。私にとっても、印象深いアイテムになりました。


土地に根を張るものづくり

滝口:デニム生地の製織は岡山県井原市、裁断は岡山県倉敷市児島、縫製は香川県善通寺市。香川の縫製工場は、岡山の児島から瀬戸内海を渡ってすぐの場所だと伺いました。簡単にまとめるのは難しいと思いますが、岡山でのデニムづくりについて教えていただけますか?

大戸:岡山は江戸時代から綿花の栽培が盛んで、織物の産地でした。特に倉敷市の児島周辺には作業着の縫製工場がたくさんあったのですが、時代とともにコスト面から海外生産に移っていったんです。そこで、国産のデニムでカジュアルアイテムを作ろうという動きが広がりました。

菊池:なるほど。デニムといえばアメリカの作業着というイメージがあります。

大戸:そうです。でも、アメリカから日本にデニムが入ってきた段階では、すでに作業着というよりカジュアルファッションという位置づけだったと思います。輸入品しかなかった時代に、国産デニムを作り始めた点で、岡山県は先駆けでした。今では、機械織りのデニム生地の国内生産の約95%は岡山県です。

菊池:縫製工場で職人さんがデニムを縫っている様子を見せていただいたんですが、まるで“デニムの海原”で作業しているような迫力でした。やっぱりデニムって、特別な生地だな、職人技なんだなって。

大戸:そうですね。各工程に、それぞれ知恵と熱量があるので、職人さんには敬意を払いつつ、細かなリクエストも丁寧に伝えるようにしています。私は、おふたりと決めたことを職人さんに伝える翻訳者みたいなものですね。

滝口:逆に職人さんとやりとりに出てくる専門用語を、私たちに噛み砕いて教えてくださいましたよね。大戸さんの屋号「Spinner」(糸を紡ぐ)の通り、製造に関わるすべての人との関係をひとつひとつ丁寧に紡いでくださったことで、このジーンズが完成したんだなと実感します。

大戸:瀬戸大橋を渡りながら、中国地方と四国地方を行き来して完成したジーンズは、工場の皆さんの情熱と緻密な手作業があってこそです。

菊池:岡山の空みたいなブルーのジーンズ。なんだかいいパワーを感じます。私たち世代の体型をやさしく包み込んでくれる包容力も抜群。長く愛用して、自分色にしていきたいですね。

photo :Takahiro Otsuji
text : Yuka Nakano